相場のボラティリティを計測するためのテクニカルツールATR
ATR(Average True Range)とは
ATRは、米国のアナリストJohn Welles Wilder.Jr(J.W.ワイルダー)氏が考案した、
オシレーター系のテクニカル指標です。
J.W.ワイルダー氏と言えば、他にもRSIやADX
前回の記事でご紹介したパラボリックSARなどを考案した
著名なアナリストです。
表題にもありますが、ATRは、”Average True Range”の頭文字で、
それぞれの意味は、Average(平均)True(真実)Range(範囲)となり、
「真の平均値幅」という意味になるかと思います。
相場のボラティリティを示すテクニカル指標で、
値動きの度合いの平均を示すものとなります。
こちらの画像をご覧ください。
サブチャートに表示されているのがATRで、
相場のボラティリティに応じてこのラインが
上下振り子のように動きます。
このATRがどういった計算で算出されており、
どう利用していけばいいのかをご説明致します。
ATRの計算式
ATRの算出方法は次の通りです。
ATR = TR(True Range)の n日間指数平滑移動平均(EMA)
※nは14を用いるのが一般的
TRは以下のA~Cのうち最大の値幅のものを採用
A.当日の高値と当日の安値の差→当日の高値-当日の安値
B.当日の高値と前日の終値の差→当日の高値-前日の終値
C.前日の終値と当日の安値の差→前日終値-当日安値
TR値を、n期間指数平滑移動平均(EMA)化したものが、
ATRになるわけです。
この計算式は、J.W.ワイルダー氏の解説に基づいた、
日足での計算式になりますが、
テクニカルの本質に基づけばこの計算式は、
その他の時間足にも応用可能と考えられます。
例えば、15分足の場合、
TRを15分足の高値・安値・終値を使い、
15分足の本数を使って計算する
といった具合です。
ATRの見方とその特徴を解説
ATRは、価格変動のボラティリティを示すインジケーターなので、
一般的なオシレータ指標のような
トレンドの方向(上昇・下降)との連動性はありません。
相場が下降していても、その変動幅が大きければATRは上昇しますし、
相場が上昇していても、その変動幅が小さければATRは下降します。
※もちろんこれらの逆もあります。
つまり、ATRは
価格変動の度合い
のみをグラフ化している指標だということです。
基本としては、
ATRが上昇=ボラティリティが高まっている
ATRが下降=ボラティリティが低下している
ということです。
その上で、トレンド相場においては、
ATRが上昇=トレンド継続の示唆、急上昇からの急反発を示唆
ATRが下降=トレンドの終焉、押し目戻りを示唆
と考えることが出来ます。
そして、レンジ相場においては、
ATRが上昇=レンジブレイクの可能性を示唆
ATRが下降=レンジの継続を示唆
時間の経過とともにレンジブレイクの可能性を示唆
と考えることが出来ます。
このようにATRは、
あくまでも環境認識の一つとして活用できるツールであり、
ATRから売買そのもののサインが出るようなものではない
ということです。
ですので、基本的には、他のインジケーターや
トレード手法と組み合わせることでトレードします。
エントリー時のリスクリワードの目安や利確損切り幅の目安として活用
ATRは、直近n期間の最大変動幅の平均値を示す指標です。
考案者が推奨する14日間で設定した場合、
過去14本日間の最大変動幅を平均化(EMA)したものということです。
過去14日間の最大変動幅の平均値を把握することで、
今日の値幅がどれくらいの動くのか
という客観的な一つの目安とすることができます。
値幅の目安がわかれば、
トレードにおけるリスクリワードへの参考にしたり、
利確幅や損切り幅の目安にもすることが可能です。
実際のチャートで見ていきましょう。
以下のチャートは、金融市場全体に歴史的なボラティリティをもたらした、
2020年3月13日付のドル円の相場が終了した時点の日足チャートになります。
この時点でのATRの値は2.265とボラティリティが非常に高くなっています。
これをドル円でpips換算すると226.5pipsになります。
ローソク足の次の足では、ATRの値もそれに応じて変動するので、
始値次第で変動しますが、この時点で次の足は上下226.5pips変動するという
一つの目安として考えることが出来ます。
変動率を換算しないで考えた場合、週明けの16日のドル円は、
高値=107.960+(226.5pips)=110.225
安値=107.960-(226.5pips)=105.735
として、一つの目安として考えることが出来るということです。
もちろん、必ずしもそのATRの100%を再現するとは限らず、
それを下回る可能性も上回る可能性もあります。
あくまでも一つの客観的な目安として
想定することが出来るというわけです。
ATRまとめ
このようにATRは“ボラティリティ”を図る指標であることから、
売買シグナルを発するような性質のものではありません。
ATRによる直接的な売買ポイントもないということになります。
日々の相場の動向によって拡大・縮小することとなり、
変動率が拡大傾向のときにはATRも上昇し、
逆に落ち着いた動きは、ATRは小動き(横ばい)となります。
注意しておきたいのが、
著しい上昇のときは短期的に上下に振れる可能性があり、
反対に鈍い動きが続いた時も、その反動から相場が急変し
急激に振れる展開となる場合があり、
レンジブレイクに繋がることもあり得るということです。
ATRが提唱されるまでは、
市場のボラティリティ(価格変動の度合い)の定義は曖昧でした。
J.W.ワイルダー氏は、その曖昧とされていた市場のボラティリティに対して
客観的な定義(ATR)を与えようと考えたわけです。
トレードをする上で、レートが平均的にどれくらい動くのか
ということを知ることはとても大切です。
それがわかる指標ということで、
ATRは必ずチェックしておきたい指標の一つかと思います。
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